それまで古い家や賃貸にお住まいだった方は、収納の少なさ、使い勝手の悪さを実感しているだけに、注文住宅を建てる際には口をそろえて「収納はたくさんほしい」とおっしゃいます。
それでも、あとになって「収納が少ない」「収納が使いにくい」と後悔する方が多いのは、なぜなのでしょうか?
Contents
収納で失敗する理由

多くの方が、注文住宅を建てて住み始めてから「もっと収納を増やしておけばよかった」と感じています。その理由として、おもに以下の4つが考えられます。
収納計画が住宅会社まかせ
そもそもが、住宅会社に提案されるままのプランを採用しているという人。意外と多いのではないでしょうか?
しかし、住宅会社が提案するのは、あくまでも標準的な収納プラン。本来、収納スペースは、
「おしゃれが好きなので、人よりも手持ちの洋服や靴が多い」
「子どもがスポーツで使うユニフォームや練習着、道具類を1か所にしまいたい」
「在宅勤務のある仕事なので、仕事道具をまとめて置いておく必要がある」
など、あなたのご家族のライフスタイルに合わせて最適化しなければなりません。住宅会社まかせにせず、あなた主導で収納計画を。
所有物の量を過小評価していた
普段着以外では、シーズンオフの衣類にフォーマルウェア。趣味のキャンプ道具や防災グッズ一式。予備のお布団。ペットのフードやトイレ用品、ケア用品。
こんなふうに、頭の中で「あれと、これと」と考え、リストアップしていくと、ついつい大事なものが抜けてしまうことがあります。
日常的に使用しているものだけでなく、クリスマス飾りや正月飾りなどの季節用品、夏の海水浴グッズ、子どもが小さい頃に遊んだおもちゃや絵本など、普段目に入らないものも含めると、家の中に収納されているものは驚くほどの量になります。
とくに見えないところに収納しているものは正確に把握できていないことが多いため、収納計画の際には家の中にあるものを一旦すべて確認しておくことが大切です。

断捨離を前提で収納量を決めた
「引っ越す前に、使わないものは捨ててしまおう」
「新居では、必要最小限のものですっきり暮らそう」
そんなふうに理想を持って収納計画を立てたものの、思い出の品や「将来使うかもしれない」ものなど、実際には捨てられなかったというケースも少なくありません。とくに家族で暮らす場合、自分だけの判断で捨てられないものも多く、結果として予定していた以上のものが新居に持ち込まれることになります。
これまで培った生活スタイルはなかなか変えられないため、断捨離したはいいけれど、新居に移ってからアレもコレもと買い足して、再びものであふれた生活に逆戻りということも考えられます。
収納計画にあたっては、「理想の暮らし」ではなく「現実の所有物の量」を基準に、極端にものを減らすことは考えずにおきましょう。
収納の使いやすさを考慮していない
収納計画で大切なのは、量ではありません。機能性、つまり「仕舞いやすく、出しやすい」ことです。
「収納が少ない」「収納が足りない」という声をよく聞きますが、それは本当ですか? 実は、収納スペースが足りないのではなく、使い勝手が悪いだけなのではないですか?
たとえば、リビングにクローゼットのような壁面収納しかなかったら? 日常的に使う筆記用具や新聞、雑誌類はどこに片付けますか?
広い納戸を設けたのはよいけれど、奥にあるものを取り出せない。同様に、収納の奥行きが深すぎると奥のものが取り出しにくく、結果として手前のスペースしか使われないという事態も起こりがちです。
だから、収納計画では「どこに」「何を」「どのように」収納するかを具体的にイメージすることが大切なのです。
失敗しない収納計画の立て方

このような失敗をなくすため、あらかじめ収納計画をしっかりと立てておきましょう。以下の3つのポイントを押さえておけば、大きな後悔はないはずです。
まずは収納量をしっかり把握する
収納計画の第一歩は、現在所有しているものを正確に把握することです。
具体的な方法としては、家中に片付けられたものを引っ張り出してみる。それらを、使用する場所やシーンごとに仕分けしておきます。さらに、それらを使用する頻度ごとに仕分けしていきます。この時点で、もう絶対に使わない、今後必要ないと思われるものに関しては、先に断捨離してしまいましょう。
また、子どもの成長にともなう学用品や今後始めたい趣味の道具など、将来的に増えると予想されるものも見込んでおくと安心です。
それらをすべてリストアップしたうえで、どこにどんな収納が必要かを設計士と相談しましょう。
収納は生活動線を考えて配置する
2階の納戸、小屋裏収納、床下収納。これらは、使いにくい収納の代表格といえるのではないでしょうか。
何が問題なのかというと、生活動線が一切考慮されていない点。収納の配置は、日常の生活動線に合わせて計画することが大切です。使用頻度の高いものほど、使う場所の近くに配置するのが原則。
たとえば、パントリーをキッチンのそばに設けるのは当然ですが、これが玄関からキッチンの動線上にあることで、より使い勝手はよくなります。

子どものおもちゃは、子どもが普段過ごす場所に収納スペースを設けます。子ども部屋で遊ばせるなら、部屋の中に大きな箱やかごを用意しておいて、その中へ。リビングで遊ばせるなら、リビングに。来客があることを考えると、目隠しできる収納がいいですね。
本はどこで読みますか? リビング? 寝室? 専用の図書室をつくる? もし、リビングでも読むし、寝室へ持ち込むこともあるというのなら、リビングから寝室へと続く動線上に書棚があると便利です。
収納は使い勝手とゆとりを重視
使いやすい収納といえば、「しまいやすく」「取り出しやすい」こと。
とくに奥行きの深い収納は一見たくさん入りそうに見えますが、先ほども申し上げたように奥のものが取り出しにくく、結局は手前のスペースしか使われないことがよくあります。だから、引き出しや棚はできるだけ浅めに、多段に設けます。リストアップした荷物の寸法を測って、最大でどれくらい奥行きが必要かを把握しておきましょう。
また、収納は現在の所有物がちょうど入る大きさではなく、少し余裕を持たせた計画が理想的です。一般的には、計算した必要量の2〜3割増しのスペースを確保します。
この余裕スペースには、いくつかの重要な役割があります。一つは、将来的に増えるものの受け皿になるということ。もう一つは、収納内での整理整頓のしやすさを確保することです。ぎっしり詰まった収納は、ものを取り出したり戻したりする際に他のものを動かす必要があるため、結局は日常的な出し入れがわずらわしくなり、ものが出しっぱなしになることも。
また、スペースに余裕を持たせることで“見せる収納”と“隠す収納”のバランスも取りやすくなります。お気に入りの食器や本、コレクションなどは適度に空間を取って美しく飾り、生活感のあるものは隠してしまいましょう。
足りない収納を補うアイデア4つ

もう少し収納を増やしたいけど、スペースがない。そんなときに役立つ、空間を有効活用するアイデアをご紹介します。
(1)壁面収納の活用
空間を最大限に活かす「壁面収納」は、収納力を高める非常に効果的な方法です。
壁一面を収納スペースとして活用することで、床面積を犠牲にせずに大容量の収納を確保。“見せる収納”と“隠す収納”を組み合わせればインテリア性を高めることもできますし、完全に隠してしまいたいなら一枚扉で開け閉めできるようにしておきましょう。白一色でまとめるなど、壁と同じ色の扉にすれば、悪目立ちすることもありません。
テレビボードやオーディオボードと一体で仕上げてもいいですね。
(2)テレビ背面の活用
収納スペースをつくりたいけど、壁面が足りない。そんな時は、壁の手前にもう一枚壁をつくります。その壁をテレビの背面壁として利用し、裏側の空間を収納スペースとして使用します。
これだけで、リビングの収納力は大幅UP。DVDやゲームソフト、本、子どもの学用品まで、リビングで使うものを1か所にまとめて収納できますよ。
室内からは死角になるので、少々ごちゃごちゃしても大丈夫。扉なしのウォークスルーで、使い勝手も抜群です。

(3)小上り引き出し収納
収納スペースが欲しくて、畳コーナーをフラットではなく小上りにしたという方はいませんか?
40cmほど床を上げた小上がりなら、下部を引き出し収納として使用できます。子どものお昼寝スペースや遊び場所として小上りを使用するなら、おむつやお出かけグッズ、おもちゃなどの育児用品をまとめておいてはどうでしょうか。新聞や雑誌類をポイポイ投げ込むのにも便利です。
ただし、地面に近い部分ほど湿気が多いものなので、湿気に弱いものを収納する場合は新聞紙を敷く、乾燥材を入れておくなどの対策を。予算に余裕があれば、湿気に強い桐や杉材で内部を仕上げるといいですね。
(4)デッドスペース活用
家の中には、一見無駄に見えるスペースがいくつもあります。これらの「デッドスペース」を賢く活用することで、驚くほどの収納力を生み出せます。
階段下のスペースは、最も典型的なデッドスペース。このスペースを活用して、収納棚や引き出しを設置してみましょう。リビング階段なら、子どもの学習スペースや遊び場と組み合わせるのにぴったりです。
廊下も今や、デッドスペースといわれる存在。せっかくならば、壁に沿って収納棚やハンガーパイプを設置して、クローゼットや書棚と兼用してしまいましょう。
多すぎる収納がもたらすデメリット

「収納は多ければ多いほど良い」
ついそう考えがちですが、その考え方は正しいとはいえません。収納スペースが多すぎると、以下のようなデメリットが生じることもあります。
・居住スペースが圧迫される
・どこに何があるのか把握しづらくなる
・収納スペースに合わせてものが増える
このようなことにならないよう、収納計画では適材適所に加えて、適量を心がけることが重要になってきます。
収納計画を立てるメリット

収納計画をしっかり立てておくことで、多くのメリットが生まれます。
まず、必要なものが必要な場所に収まっていれば、ものを探したり、出し入れしたりする手間が省け、時間の節約につながります。
次に、家の中にものがあふれることがなくなり、常に整理整頓された状態を保ちやすくなります。
さらに、家事の効率が上がります。とくにキッチンや洗面脱衣室など、家事の拠点となる場所での収納計画は、毎日の家事時間を大幅に短縮してくれます。
何より、家の中がきちんと片付いていることで心理的な安心感が得られ、心に余裕が生まれます。
家での時間をより快適に過ごせるよう、注文住宅を建てる際の収納計画は綿密に行いましょう!
執筆者プロフィール
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二級建築士/宅地建物取引士
» 建築設計事務所にて、確認申請や意匠・構造を含む実施設計図の作成、構造計算等の実務に従事。
» CADオペレーターとして公園設備や保育施設、土木現場、化学工場など、住宅以外の幅広い分野を経験。
» 建設会社の住宅部門にて、建築家との協働による注文住宅の営業を担当。お客様と建築家の間に立ち、設計の意図を伝え、暮らしの希望を形にする仕事に携わるなかで、「住宅について本当に知りたいことと、世の中に出回っている情報のあいだには、大きなズレがある」と感じるようになる。
その後、フリーの住宅ライターに転身。現在は合同会社カメレオン企画の代表として、住宅・建設業専門のコンテンツ制作に携わるほか、建築専門書籍の編集・リライトも手がける。
「住まいの内緒話」は、設計も営業も経験した住宅の【中の人】が、売る側の都合ではなく、住む人の目線で書く住宅メディアです。ネットに溢れる情報の「それ、本当?」に、できるだけ正直に答えていきたいと思っています。
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