続く、平屋人気。平屋の家はもはや一過性のトレンドではなく、家づくりの定番となりつつあります。
国土交通省が実施した【建築物着工統計】によると、2020年(令和元年)から2024年(令和6年)の5年間で、平屋の着工数は約1.26倍に。2014年(平成26年)からの10年間では、なんと1.87倍に増加しています。
また、2024年(令和6年)12月にフリエ住まい総研が行った実態調査でも、「平屋の戸建てに魅力を感じる」人が52.8%と、回答者の半数以上が平屋を支持していることがわかりました。


かつては“平屋=バリアフリー”というイメージが強く、中高年が“終の棲家”として平屋を選択している印象でしたが、シンプルで無駄のない暮らしを実現できる平屋は、今では子育て世代を中心に高い人気を集めています。

しかし、平屋には平屋特有のデメリットもあります。そうしたデメリットを解消しつつ、平屋ならではの快適で機能的な暮らしを実現するためには、間取りの工夫が欠かせません。
今回は、最新のトレンドを取り入れつつ、平屋でおしゃれに暮らすための間取りのポイントを5つご紹介いたします。

(1)勾配天井で演出する開放感


住宅の高断熱化が進んだことで、寒さを躊躇することなくリビングに吹き抜けを取り入れる人が増えています。吹き抜けのメリットは、視線を上部へと導き、空間に縦方向の広がりをつくること。
しかし、2階のない平屋では、そもそも“吹き抜けをつくる”という選択肢がありません。高い天井、上部へ広がる開放感を好む人にとっては、そういった点で平屋を「ちょっと物足りない」と感じるかもしれませんね。

吹き抜けと勾配天井

しかし、吹き抜けが無理でも、平屋では “平屋ならでは”の開放感を演出できます。具体的には、天井を目いっぱい高くする。そして、屋根の勾配に沿うように天井を斜めに施工にする。
南側を棟(屋根の一番高い所)にした片流れ屋根なら、屋外に向けて天井を高くし、掃き出し窓の上に高窓をレイアウトできるので、視線が空へ広がるような開放感を演出できます。

屋根の高さを活かした勾配天井なら、2階建ての吹き抜けのような空間のロスも生まれませんし、手間代のプラスはあったとしても、吹き抜けほどのコストアップはありません。

天井を自由にデザイン

勾配天井に限らず、船底天井、腰折れ天井、掛け込み天井など、天井の形を自由にデザインできるのも平屋の魅力です。
天井をデザインすることは、ただ高い天井で開放感を演出するだけでなく、空間全体を立体的にデザインできるということなんですね。

(2)ランドリールームで家事ラク


平屋が人気な理由のひとつは、生活空間がワンフロアに集約されている点。この特徴を活かせば、平屋では2階建ての住まい以上に効率的な家事動線を確保することができます。

効率的な洗濯動線

家事動線の中でも、とくに注目したいのが洗濯から収納までの一連の流れです。
脱衣室で脱いだ衣類を、隣接したランドリールームで洗濯する。そして、その場で干す。乾いた洗濯物は、そのままファミリークローゼットへ。ランドリールームと隣り合い、かつそれぞれの個室へと続く動線上にファミリークローゼットをレイアウトすれば、朝の着替えも効率UP。

回遊動線で時短生活

ランドリールームは、できるだけキッチンのそばに設けましょう。
洗濯する時間は朝派と夜派で分かれますが、キッチンからの距離が近ければ近いほど、「朝お弁当を作りながら洗濯する」「夕飯の後片付けをしながら洗濯する」というマルチタスクがしやすくなります。
さらに、キッチンから水回りと玄関の二方向へ抜ける動線があり、玄関と水回りが直接つながる回遊動線を取り入れることができれば、来客時の対応もスムーズに。

(3)ヌックでくつろぎの時間を


ワンフロアの開放感が平屋の大きな魅力ですが、住まいにおいては時に一人で静かにくつろげる場所も必要です。オープンな平屋に、あえて小さな居場所を作る。それだけで、落ち着きと開放感のバランスが取れた心地よさが生まれます。

趣味の空間、小さな居場所

ヌックとは“小ぢんまりとした居心地のよい場所”のこと。スコットランド語で“小さな隅や角、静かで隠れた場所”などを意味する『neuk(ヌーク)』が語源です。
完全に隔離された場所ではなく、LDKの片隅に3面を壁で囲まれた小さな空間を設け、ソファや小上がりを造作する。それだけで、読書などの趣味にも没頭しやすくなります。

ワークスペースにも最適

ダイニングの片隅など、オープンな場所にカウンターを渡してワークスペースにしている事例をよく見かけますが、これをもう少し閉鎖的な雰囲気にしてみることで、ヌックの要素を備えた空間に早変わり。
デスクまわりを袖壁や腰壁で囲ったり、LDKから個室へ続く動線上にワークスペースを設けるという平屋ならではの間取りを取り入れることで、家族の気配を感じつつ、ひとりでゆったりとくつろぎ作業できる環境が整います。

(4)土間やデッキでつなぐ空間


土間や濡れ縁は、かつての日本家屋には欠かせないものでした。近年、この室内外をシームレスにつなぐ土間やデッキを取り入れた空間が再び注目を集めています。

空間をシームレスにつなぐ

平屋の家は、家の中と外に一体感が生まれやすいのが魅力のひとつですが、リビングの一部に土間スペースを取りれたり、掃き出し窓の外にデッキを設置したりすることで、室内外の境界がより曖昧になり、よりリビングと庭が一体化しやすくなります。

また、南側の掃き出し窓に沿って設けた土間スペースは、時には昔ながらの縁側のように家の中と外の中間層としての役割を果たし、冬はインナーテラスとして太陽の熱をふんだんに取り入れ、蓄熱することも可能です。

空間を緩やかに分ける

土間は空間をつなぐだけでなく、曖昧に分ける役割も持っています。
家の中と外を緩くつなぎ、緩く分けるのもそうですが「年頃のいる子どもがいる」「多世帯同居している」「プライバシーを大事にしたい」ご家庭の場合は、平屋のオープンさがネックになることも。そんな時は、この土間の“緩く分ける”性質をうまく活用してみましょう。
家族の共用スペースと個室エリアを土間で仕切る。親世帯と子世帯の間を土間で仕切って、勝手口へつなげる。これだけで、同じ家に住まいながら母屋と離れのようなプライバシー性を保てます。

5.中庭のある暮らし


建物の中心部に庭を配置することで、平屋ならではの開放感を最大限に発揮しつつ、プライバシー性の低さという平屋のデメリットとなりがちな点を解消しやすくなります。

コートハウスで個と和の両立

例えば、庭を囲むようにして建物をL字型やコの字型、ロの字型に配置する。このように、壁で囲まれた庭のある家を『コートハウス』といいます。
コートハウスにすることで、家中どこにいても庭に手が届く暮らしが実現するだけでなく、中庭を挟むことで各々のプライバシーを守りやすくなると同時に、どこにいても中庭越しに家族の気配を感じられるという優しい間取りが実現できます。

緩く囲い、守るプライバシー

家族間のプライバシーだけでなく、平屋の場合はどうしても隣近所の2階建ての家やアパートから見下ろされる形になってしまうため、外からのプライバシーも希薄になりがちです。そんな時も三方、四方を壁で囲ったコートハウスなら、外部からの死角が増えて安心です。

もし、敷地面積や予算的な関係で建物をL字型やコの字型に配置するのがしい場合には、高めの塀やフェンスで目隠しを。緩く囲われた屋外空間は、外からの視線を気にすることなく四季折々の植物を楽しめる癒やしの空間となるはずです。

平屋ならではの間取りでおしゃれな暮らしを


効率的な動線で家事を手早くすませたあとは、中庭のグリーンを眺めながらコーヒーを楽しむ。日中はヌックで読書を楽しみ、夜はライトアップされた植栽を眺めながら家族でくつろぎの時間を。

住まいづくりにおいて、ライフスタイルに合った間取りを選ぶことは非常に重要です。
平屋の魅力を最大限に活かしつつ、家族の暮らしやすさを考慮した間取りプランを考えていくことは、きっとあなたとご家族の理想の住まいづくりへの第一歩となるでしょう。