2025年末で終了予定だった住宅ローン控除が、2030年末まで5年間延長される見通しとなりました。政府・与党が2025年度の税制改正で延長方針を発表し、中古住宅の借入上限引き上げや控除期間の延長が検討されています。これから家を建てる方、あるいは中古住宅の購入を考えている方にとって、大きな安心材料となるでしょう。延長決定の詳細から制度の基本、具体的な控除額、手続き方法まで、住宅ローン控除の全体像を丁寧にお伝えします。
» 令和7年(2025年)の今、住宅ローン控除はどうなってる?
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住宅ローン控除5年延長の内容と今後の見通し
住宅ローン控除の延長は、住宅市場の活性化と子育て世帯の支援を目的として決定されました。現行制度は2025年12月末までの入居が対象となっていますが、この期限が2030年末まで延長されます。

延長決定の経緯
現行の住宅ローン控除制度は、2025年12月末に入居した方までが対象となっています。しかし近年、住宅価格の高騰により、特に子育て世帯の住宅取得環境が厳しさを増していました。こうした背景を受けて、政府・与党は2025年末の税制改正大綱で延長方針を示しました。
(財務省 » 令和8年度税制改正要望(国土交通省))
延長後の制度内容
延長期間は2026年から2030年末までの5年間となる見込みです。控除率0.7%、控除期間13年(新築の場合)という現行の基本的な枠組みは維持される方向で調整されています。ただし詳細な借入限度額については、今後の正式決定を待つ必要があります。
見直し内容
今回の延長に伴い、いくつかの見直しも検討されています。中古住宅の借入上限は現在の最大3,000万円から最大4,500万円へ引き上げられる方向で調整中。また控除期間についても10年間から13年間への変更が検討されており、中古住宅を取得しやすい制度へと変わる可能性があります。
(日本経済新聞 » 住宅ローン減税、中古の限度額は最大4500万円に上げ 制度5年延長)
2026年以降の具体的な条件は、2025年末に正式確定する予定です。控除率や限度額が変更される可能性もゼロではありません。そのため、2025年中に入居すれば現行制度が確実に適用されるという点は押さえておきたいところです。
住宅ローン控除とは?制度の基本を理解する
住宅ローン控除は、住宅ローンを組んで家を購入した方の税負担を軽くする制度です。正式名称は『住宅借入金等特別控除』といい、「住宅ローン減税」とも呼ばれます。
(国土交通省 » 住宅ローン減税)
(国土交通省 » 住宅をリフォームした場合に使える減税制度について)

制度の目的
住宅ローン控除には、大きく3つの政策目的があります。ひとつ目は住宅取得の負担軽減です。住宅ローンは長期間にわたる大きな借入であり、税制面からの支援は家計にとって重要な助けとなります。ふたつ目は環境に配慮した省エネ住宅の普及促進です。2024年以降は省エネ基準適合が必須要件となり、環境負荷の低い住宅への誘導が図られています。そして3つ目が子育て世帯や若者夫婦世帯への支援です。少子化対策の一環として、借入限度額の上乗せなどの優遇措置が講じられています。
住宅ローン控除の仕組み
この制度の基本的な仕組みは、年末時点のローン残高に対して0.7%を乗じた金額を所得税から控除するというものです。所得税で控除しきれない分については、翌年の住民税から控除されます。ただし住民税からの控除には上限があり、年間9.75万円までとなっています。
控除期間
控除を受けられる期間は、改正案を踏まえると以下のように変更されると考えられます(2025年12月現在)。
- 新築住宅:13年間
- 買取再販住宅:環境性能の高い物件や子育て世帯購入の場合は13年間、その他は10年間
- 中古住宅:環境性能の高い物件や子育て世帯購入の場合は13年間、その他は10年間(2026年以降)
- リフォーム・増改築:最大10年間
※買取再販住宅とは、不動産会社が中古住宅を買い取り、リフォームやリノベーションを施して再販売する住宅のことを指します。
新築住宅の借入限度額と最大控除額
新築住宅の場合、住宅の性能によって借入限度額が異なります。以下は2025年入居の場合の内容であり、2026年以降の詳細は現時点では不確定です。

住宅の種類による借入限度額の違い
住宅の種類によって、借入限度額は大きく異なります。特に子育て世帯や若者夫婦世帯には優遇措置が設けられています。
| 住宅の種類 | 一般世帯 | 子育て・若者夫婦世帯 |
| 認定長期優良住宅・低炭素住宅 | 4,500万円 | 5,000万円 |
| ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円 | 4,500万円 |
| 省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 4,000万円 |
| その他の住宅 | 原則対象外 | 原則対象外 |
認定長期優良住宅:耐震性・省エネ性・劣化対策など複数の基準を満たし、所管行政庁から認定を受けた住宅
認定低炭素住宅:CO2排出を抑える措置が講じられ、所管行政庁から認定を受けた住宅
ZEH水準省エネ住宅:断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上
省エネ基準適合住宅:断熱等性能等級4以上かつ一次エネルギー消費量等級4以上
その他の住宅:上記いずれにも該当しない住宅(2024年以降は原則対象外)
最大控除額の計算例
具体的な数字で見てみましょう。認定長期優良住宅に住む子育て世帯の場合、借入限度額は5,000万円となります。この場合の最大控除額は、
5,000万円×0.7%×13年=455万円(最大)
です。一方、省エネ基準適合住宅に住む一般世帯であれば、借入限度額は3,000万円なので、
3,000万円×0.7%×13年=273万円(最大)
となります。
中古住宅・リフォームの借入限度額
中古住宅やリフォームの場合も、住宅ローン控除の対象となります。以下は2025年入居の場合。2026年以降は変更が予定されています。

中古住宅の借入限度額
中古住宅の場合、現行制度(2025年度)では以下のような借入限度額が設定されています。
| 住宅の種類 | 借入限度額 | 控除期間 |
| 認定住宅・ZEH・省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 10年 |
| その他の住宅 | 2,000万円 | 10年 |
※令和8年度(2026年)以降は支援拡充のため、環境性能の高い物件の借入上限を3,500万円に、子育て世帯などの購入では最大4,500万円に引き上げる方向で調整されています。また、控除期間についても13年間に延長される見込みです。
適用条件
中古住宅で住宅ローン控除を受けるには、一定の条件を満たす必要があります。
- 1982年1月1日以降に建築された住宅
- または新耐震基準に適合していることが証明できる住宅
- 買取再販住宅(不動産会社がリフォームして販売)は新築と同等の優遇あり
リフォーム・増改築の場合
リフォームや増改築についても、一定の条件を満たせば住宅ローン控除の対象となります。
- 工事費用が100万円超
- リフォーム後の床面積が50㎡以上
- 対象となる工事の種類(増改築、耐震改修、省エネ改修など)
子育て世帯・若者夫婦世帯への優遇措置
住宅価格の高騰により、特に子育て世帯の住宅取得環境が厳しくなっています。少子化対策の一環として、子育て世帯や若者夫婦世帯には特別な優遇措置が設けられており、この措置は2025年も継続され、2026年以降も延長される方針です。

対象となる世帯
優遇措置の対象となる世帯は、以下のように定義されています。
- 子育て世帯:19歳未満の扶養親族を有する世帯
- 若者夫婦世帯:夫婦のいずれかが40歳未満の世帯
- 判定時点は「入居した年の12月31日時点」の現況
優遇内容
借入限度額が一般世帯より500万円から1,000万円上乗せされます。これは2022年・2023年入居時の水準を維持したものです。例えば認定住宅の場合、一般世帯の最大控除額は409.5万円ですが、子育て世帯や若者夫婦世帯では最大455万円となり、約45万円の差が生じます。
住宅ローン控除の適用条件【完全チェックリスト】
住宅ローン控除を受けるには、さまざまな条件を満たす必要があります。ここでは、すべての条件を網羅的にまとめました。

住宅ローンに関する条件
□返済期間が10年以上であること
□金融機関等からの借入であること(親族からの借入は対象外)
□勤務先からの借入の場合、金利0.2%以上であること
住宅に関する条件
□床面積が50㎡以上(登記簿面積で判断)
□床面積の2分の1以上が自己居住用であること
□2024年以降の新築は省エネ基準適合が必須
居住に関する条件
□住宅の引渡し(工事完了)から6ヶ月以内に入居
□控除を受ける年の12月31日まで継続して居住
所得に関する条件
□合計所得金額が2,000万円以下
□床面積40㎡以上50㎡未満の緩和措置を受ける場合は1,000万円以下
その他の条件
□居住用財産の譲渡所得の特例(3,000万円控除など)を受けていないこと
□入居した年とその前後2年以内に上記特例を受けていないこと
2024年以降の新築は省エネ基準適合が必須
2024年から、住宅ローン控除の対象となる新築住宅には省エネ基準適合が必須要件となりました。これは環境政策の一環として導入されたもので、今後の家づくりにおいて重要なポイントとなります。
(国土交通省 » 住宅ローン減税 省エネ要件化等についての 説明会資料)

省エネ基準適合が必須になった背景
日本は2050年カーボンニュートラルの実現を目指しており、住宅分野でも環境負荷の低減が求められています。2025年4月からは全ての新築住宅に省エネ基準適合が義務化される予定です。住宅ローン控除では、この義務化に先行して2024年から省エネ基準適合を必須化することで、環境性能の高い住宅の普及を促進しています。
省エネ基準に適合しない「その他の住宅」の扱い
2024年1月以降に建築確認を受けた新築住宅で、省エネ基準に適合しない住宅は原則として住宅ローン控除の対象外となります。ただし、2023年12月31日までに建築確認を受けた住宅については例外的な措置があり、借入限度額2,000万円、控除期間10年で適用を受けることができます。この場合、確認済証または検査済証の写しを提出する必要があります。
申告時に必要な省エネ性能の証明書
確定申告の際には、省エネ性能を証明する書類が必要となります。具体的には『住宅省エネルギー性能証明書』または『建設住宅性能評価書』のいずれかを提出します。これらの書類は住宅会社や設計士に依頼して発行してもらう必要があるため、早めに手配しておきたいところです。なお、確定申告に間に合わない場合でも、後日提出が可能であることが国土交通省から発表されています。
住宅ローン控除の手続き方法【確定申告の流れ】
住宅ローン控除を受けるには、決められた手続きを踏む必要があります。会社員であっても初年度は確定申告が必須となるため、流れをしっかり把握しておきましょう。
確定申告は、入居した翌年の2月16日から3月15日までの間に行います。会社員でも初年度は確定申告が必須。e-Taxを利用すれば、自宅からオンラインで申告することも可能です。
(国税庁 » マイホームを持ったとき)

確定申告に必要な書類一覧
- 確定申告書
- (特定増改築等)住宅借入金等特別控除額の計算明細書
- 住宅取得資金に係る借入金の年末残高等証明書(金融機関から送付)
- 登記事項証明書(法務局で取得)
- 工事請負契約書または売買契約書の写し
- 省エネ性能を証明する書類(該当する場合)
- 補助金等の交付を受けた場合はその証明書
会社員の場合、2年目以降は勤務先の年末調整で手続きができます。税務署から送付される『住宅借入金等特別控除申告書』と、金融機関からの『年末残高等証明書』を勤務先に提出すれば、確定申告は不要です。
個人事業主の場合は、2年目以降も毎年確定申告で手続きを行います。
住宅ローン控除で「損をしない」ための注意点
住宅ローン控除は大きな節税効果がある一方で、いくつか注意すべき点もあります。ここでは、控除を最大限に活用するためのポイントを押さえておきましょう。
控除額は「納めた税金」が上限
住宅ローン控除は、あくまで「納めた税金から引く」仕組みです。例えば、計算上の控除額が35万円でも、所得税が20万円しかない場合、還付されるのは20万円までとなります。残りの15万円については住民税から控除されますが、住民税からの控除には年間9.75万円という上限があります。そのため、年収によっては控除額を使い切れないケースもあります。
繰り上げ返済のタイミングに注意
繰り上げ返済を行う際には、返済期間に注意が必要です。返済期間が10年未満になると、住宅ローン控除の対象外となってしまいます。控除期間中は繰り上げ返済を慎重に検討し、控除期間終了後にまとめて繰り上げ返済するという方法も考えられます。
iDeCoやふるさと納税との併用
iDeCoは所得控除のため、課税所得が減少します。その結果、住宅ローン控除で引ききれる税額も減ってしまう可能性があります。同様に、ふるさと納税との併用にも注意が必要です。事前にシミュレーションを行い、全体としての節税効果を確認することをお勧めします。
2026年以降の詳細は最新情報をチェック!
住宅ローン控除は2030年末まで5年間延長される方針が決定しました。2025年中に入居すれば現行制度が確実に適用されるため、家づくりを検討している方にとっては安心材料となります。子育て世帯や若者夫婦世帯には借入限度額の優遇があり、最大455万円(子育て世帯・認定住宅の場合)という大きな節税効果が期待できます。
ただし、2024年以降の新築住宅は省エネ基準適合が必須となっているため、住宅の性能については事前によく確認しておきたいところです。また、確定申告の手続きと必要書類の準備も忘れずに行いましょう。
2026年以降の詳細は今後決定されるため、最新情報のチェックも欠かせません。中古住宅・買取再販住宅の借入上限引き上げや控除期間の延長など、さらなる改善が期待される内容が検討されています。家づくりを考えているなら、今が好機と言えるでしょう。