株式会社マイホムが男女450名を対象に実施した『次世代の住宅設備ニーズ調査』によると、Z世代の約1/3が「玄関は不要」と考えていることがわかりました。玄関ではなく、土間から家に入るスタイルに興味関心を持っている人が多いのだとか。
かつての日本家屋では当たり前だった土間が、革新的な形で復活しようとしています。
「玄関のない家」「土間から直接リビングへ」という新しい住空間は、単なるデザインのトレンドを超え、今後の暮らし方そのものに変化をもたらすことになるかもしれません。

土間とは何か


土間とは本来、日本の伝統的な民家において土足で歩ける部分を指しました。農作業や家事などの作業スペースとして重要な役割を果たしており、灰とにがりを混ぜた土、いわゆる三和土(たたき)でつくられていましたが、現代の住宅における土間はコンクリートやタイル、石などで仕上げ、室内でありながら屋外的な要素を持ち合わせた空間という位置づけです。
伝統的な土間と現代の土間の大きな違いは、その役割にあります。かつての土間が実用的な使われ方をしていたのに対し、現代の土間は生活の質を高める多機能スペースとして設計されることが増えています。


玄関のない家、その暮らし方

そもそも従来の玄関にも『玄関土間』はありますから、「玄関がない」「土間から入る」という表現はちょっとピンときませんが、おそらく“土間空間がメインで、玄関ホールがなくリビングへ直接入る家”を想定しているのでしょう。
この辺りは、帰ってきて引き戸を開けたら、妻が土間にあるかまどで野菜を煮炊きしていた江戸時代や明治時代の住まいのあり方と通じるものがあります。


つまり、従来の住宅のように玄関で靴を脱いで上がり、廊下を通って各部屋へ移動するのではなく、「玄関を入ると、そこがもう生活空間」。これが、Z世代が求める「玄関がない」「土間から入る」家の最大の特徴であるといえそうです。

日々の暮らしがスムーズに

この住まいの形は、日常生活に多くの利便性をもたらします。

・買い物帰りに重い荷物を持ったまま直接キッチンへ
・外遊びから帰ってきた子どもがそのまま土間で遊べる
・洗濯物を干す、ゴミを出すといった家事もらくちんに
・汚れや水に強いのでペットとの暮らしにも適している
・ロードバイクやサーフボード、テントなどを置ける
・薪ストーブを設置すれば冬のくつろぎスペースにも

家族のつながりを感じられる

玄関という区切りがないことで、家族の気配を常に感じられるのも大きな魅力です。
「ただいま!」と帰ってきた子どもを、その場で迎えることができる。キッチンで料理をしながら、土間で遊ぶ子どもを見守ることができる。
家族がそれぞれの居場所で自由に過ごしていても、緩やかにつながっている感覚は、現代の家族関係にぴったり合った心地よさをもたらします。


なぜZ世代に支持されるのか

土間リビングがZ世代に支持される理由。それには、Z世代特有の価値観が関係していると考えられます。


境界を曖昧にする価値観

Z世代の特徴のひとつに、曖昧さへの抵抗の少なさがあります。仕事とプライベート、オンラインとオフライン、公と私—。多様な働き方が重視される今、これらの境界は以前ほど明確ではなくなっています。
土間のある家は、そうした現代の価値観を空間デザインで表現したものといえるのかもしれません。

SNSに映えるデザイン

土間空間のデザイン的な美しさも、若い世代に支持される理由のひとつです。シンプルであるがゆえに洗練されたコンクリートやモルタルの質感、土間から続くリビングの開放感。観葉植物との相性のよさ。
その写真映えする美しさを“自分らしい暮らしを表現する場”として、SNSでも人気を集めています。



土間の多様なバリエーション

ここからは、土間の活用方法を5つ紹介します。

(1)玄関土間
最もオーソドックスな使い方です。玄関で靴を脱ぐという生活機能を持たせたもので、スペースを広くとれば自転車を置いたり、ベンチを置いてコミュニティスペースとして活用したりすることも。

(2)土間収納
近年、玄関土間に併設して設けることの多い土間収納。靴やコート類をまとめて収納できるだけでなく、ベビーカーや三輪車、園芸用品、アウトドア用品など、外で使うものの置き場所にも便利です。


(3)土間リビング
リビングの一部を土間にしたスタイルです。土足で上がれる部分と靴を脱ぐ部分がひとつの空間にあり、開放的でモダンな印象を与えます。屋内外の中間空間として、境界が溶け合うのも魅力ですね。

(4)土間キッチン
キッチンの足元を土間仕上げとすることで、水はねや汚れを気にせず料理ができるという実用性があります。厨房と客席のように、調理の場とくつろぎの場であるリビングを緩く仕切る役割も。


(4)土間ワークスペース
在宅勤務が増えた現代、土間の一部にワークスペースを設ける例も増えています。玄関からリビングへの延長線上にレイアウトすることで、家族との適度な距離を保ちつつ、来客や打合せ対応も可能に。

(5)通り土間
玄関や勝手口からキッチン・リビングまで延長した土間のこと。買い物のあとはキッチンまで一直線。生活空間としてでなく通路としての役割が強いのが、土間リビングとの大きな違いです。



土間のある家を建てる際の注意点

土間リビングにはいくつか注意点があります。その対策も含め、土間リビングを採用するか否か検討することをおすすめします。


冬の冷え対策
土間には蓄熱効果があるといわれていますが、冬、日が落ちてくるとどうしても足元が冷えてきます。広い範囲に土間を採用する場合は、床暖房を導入するなどの寒さ対策を検討しましょう。

防塵対策
玄関ホールがなく土間から直接LDKへとつながる間取りは、屋外の砂埃や汚れた空気が簡単に室内へと侵入します。二重ドアや換気システムを取り入れるなど、空気をきれいに保つ方法を考えましょう。

メンテナンス性の考慮
土間を土足で使用すると、どうしても汚れが目立ちます。掃除のしやすさに配慮するのはもちろん、コンクリート土間はひび割れしやすいので、気になる方はタイルで仕上げることをおすすめします。

足腰への負担軽減
土間はフローリングに比べて固いため、長時間過ごす場所では足腰に負担がかかりやすくなります。若いうちは大きな問題はありませんが、疲れを感じるようになったらラグを敷くなどの対策を。

プライバシーの確保
ドアを開けたら生活空間。それは家族だけでなく、来客や宅配などの訪問者にとっても同じ。玄関から中が丸見えにならないよう、視線を緩く遮る、死角をつくるなどの対策が必須となります。



土間のある家づくりのプロセス


自分たちに合った土間スタイルの家を実現するためには、以下のステップを参考にすすめてみましょう。

1.生活スタイルを見つめ直す
まずは、自分たちがどのように暮らしたいのかを明確にすることが重要です。家族構成や趣味、日常の生活動線など、具体的な暮らしのイメージを描いてみましょう。

      2.土間の役割を決める
      単なる通路なのか、通路に何らかの機能を付加するのか。生活の中心となる場所か、あるいは特定の用途に使うのか。土間に何を求めるかによって、仕様そのものも変わってきます。

      3.現地見学と専門家への相談
      実際に土間のある家を見学することで、イメージがより具体的になります。お住まいの地域の気候条件や立地に合わせた適切な設計提案を受けるためにも、経験豊富な設計者に相談しましょう。

      4.素材選びにこだわる
      土間の素材は見た目の印象だけでなく、暮らしの質にも大きく影響します。実際に土間で使われる素材を見て、触れることで、自分たちに合った選択が見つかるかもしれません。



      伝統と革新が交わる場所


        土間で緩く区切られた空間は、ただ土足で歩いたり、靴を脱いだりするだけの場所ではなく、家族のライフスタイルをも変える機能性や開放性を備えています。だから、土間があると家族が自然とその場に集まり、そして何気ない会話が生まれます。

        日本の住宅の伝統的要素でありながら、現代の暮らしに新しい価値をもたらす土間空間。外と内、公と私、これらの境界線が曖昧になりつつある現代において、開放的でありながら緩く区切られた土間のある家は、単なる住まいを超えた新しいライフスタイルの提案です。
        伝統に根ざしながらも革新的なこの空間が、これからの家族の形や暮らし方にどのような影響を与えていくのか。土間から始まる新しい暮らしの可能性は、今改めて広がり続けています。