カタログスペックで商品を比較できるハウスメーカーに対し、工務店選びは本当に難しいですね。インターネットで検索すると、施工実績、創業年数、保険加入の有無、自社施工かどうかなど、同じような項目を並べたポータルサイトがずらりと表示されます。
どれも、「なるほど」と思える内容ですが、実際にそれらすべてをクリアした工務店を見つけたとして、本当にそこで家を建てたいと思えるのでしょうか?
チェックリストがあると、確かに便利。だけど、家づくりは「条件を満たせば正解」という単純な話ではありません。むしろ、ネット上の定番アドバイスにはさまざまな落とし穴が……。
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Contents
そもそも、ハウスメーカーと工務店の違いは?

注文住宅を建てる際の選択肢として、ハウスメーカーと工務店があります。どちらが優れているという話ではなく、それぞれに強みがあります。
ハウスメーカーの強みは、大手のネームバリューによる安心感。そして、システム化された品質の安定性。一方で、工務店の強みは自由度の高さと、地域に根ざした柔軟な対応、コスパのよさ。
大切なのは、自分たちが何を求めているかを明確にすること。ブランド力や安心感を重視するならハウスメーカー、自由度と柔軟性を求めるなら工務店。どちらを選ぶかは、あなたとご家族の価値観次第です。
ネットでよく見る“選び方”のウソ・ホント10

よく見かける工務店選びのアドバイス。一見もっともらしく見えますが、実際にはどこまで参考になるのでしょうか?
建築業界出身者の目で、一つずつ検証していきます。
その1「年間施工実績が多い会社を選べ」
検証【ウソ】
施工実績の数字は、一見すると信頼の指標に見えます。でも、社員数が違えば着工数も当然変わります。大きな会社なら年間100棟、小さな工務店なら10棟未満。それだけを見て「100棟の会社の方が優秀」とは言えません。
むしろ、社員数に対して無理な受注をしていないかの方が重要。キャパシティを超えた受注は、むしろ管理の質を下げる要因にもなり得ます。
その2「創業年数が長い会社は安心」
検証【半分ホント、半分ウソ】
会社が長く続いていることは、地域からの信頼を得てきた証ではあります。悪い噂が立てば、地域密着の工務店は続けられません。その意味では「半分ホント」。
ただし、創業年数が長くても、今の経営者が先代とまったく違う考え方を持っていることもあります。重要なのは、今その会社を率いている人がどんな人物かを知ること。看板だけを見て安心するのは早計です。

その3「経営状況を調べろ」
検証【ウソではないが…】
大手ハウスメーカーなら上場企業が多いので有価証券報告書や決算短信で経営状況を確認できますが、工務店の倒産リスクを確認するために一個人が信用調査をするというのは、現実的ではないのでは?
仮に調査をしたとしても財務データは複雑で、そこから倒産リスクを確実に予測できるわけでもありません。 “ある日突然倒産”のリスクは、工務店に比べるとハウスメーカーの方が少ないでしょうね。
その4「完成保証制度に加入しているか」
検証【ウソ】
そもそも加入している工務店がかなり少ないので、完成保証への加入を条件としてしまうと選択肢が一気に減ります。もちろん、これまで加入していなかった工務店でも、頼めば加入してもらえるかもしれませんが。
さらに言うと、倒産リスクの少ない会社ほど完成保証に加入する必要性を感じていないはずなので、「経営状況のよい会社を選ぶべき」という考え方とも相反するように感じます。
もちろん、“安心を付加する”という意味では、加入しているに越したことはありませんが。
※ちなみに完成保証制度は中小企業向けの制度なので、大手ハウスメーカーは加入できません。

その5「自社施工の会社を選べ」
検証【まぁ、ホント】
“自社施工”という言葉は便利ですが、その定義は曖昧です。施工管理が自社ならよいのか、それとも大工も自社でなければダメなのか。
責任施工という意味では、やはり大工工務店は最強ですね。
» 今、自社大工が熱い!?希少だからこそ価値がある職人技術
しかし、そんな会社もいまや少数派。ハウスメーカーだって、施工は下請けの工務店に委託です。“自社施工”という言葉に踊らされず、施工品質の確認を。
その6「性能にこだわった会社を選べ」
検証【まぁ、ホント】
高気密高断熱、高耐震。高い性能は、いまや必須項目です。
ただし、設計図のうえでいくら高い性能を叩き出しても、それを実現する施工技術がなければ意味がありません。本来の性能を引き出せるかどうかは、現場の職人の腕にかかっています。
カタログスペックだけでなく、実際にどれだけ丁寧に施工しているかもしっかり見極めましょう。

その7「技術力・施工品質をチェック」
検証【ホント、だけど…】
こだわりのデザインも、最高性能も、確かな施工技術があってこそ成り立つもの。そういう意味では、「構造をしっかり見て判断しましょう」というアドバイスは紛れもなく「ホント」。
しかし、建築知識のない人にそれができるはずがありません。では、どこを見て判断すればよいのでしょうか?
判断材料の一つとしては、公共工事やアトリエ設計事務所の物件を手がける会社は、比較的施工レベルが高い傾向にあります。もし可能なら、職人や専門業者に評判を聞いてみましょう。
その8「見積もりの透明性が高いか」
検証【半分ウソ、半分ホント】
見積もりの方式には、細かく積み上げる方式と、一括いくらで提示する方式があります。
これは、どちらが優れているとは一概に言えません。積み上げ方式の方が透明性は高く信頼性もありますが、項目が多すぎてわかりにくかったり、時価に左右されやすかったりという側面も。
見積もりの内容よりも、提案されたプランに対して相対的に納得できる価格であるかどうかが大切です。
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その9「アフターフォローが充実しているか」
検証【ウソ】
ハウスメーカーのような長期保証や定期点検制度を地域の工務店に求めるのは、やや無理があります。なぜなら、
「何かあったときに、電話一本で駆けつける」
「どんなことでも気軽に相談できる」
というのが、地域の家守りとしての工務店の役割だから。その気安さが、形式的な保証制度以上の安心につながることも多いのです。
その10「施主の声を参考にしろ」
検証【ウソ】
工務店のホームページに載っている施主の声や、OB宅訪問。当然ながら、満足度の高かったお客様しか出せません。
家づくりは人と人との関係。同じ工務店でも、担当者や施主によって相性も違えば、どこかで歯車が狂ってしまうこともあります。100%うまくいく保証はどこにもありません。施主の声は参考程度にとどめておくのが賢明です。
では、工務店選びで本当に大切なことは?

結局のところ、本当に大切なのは何でしょうか?
その工務店の理念や家づくりのコンセプトに、心の底から惚れ込むことができるかどうか。それが、失敗しない住宅会社選びのスタートライン。その気持ちをきちんと開示すれば、相手も誠心誠意、あなたに尽くしてくれるはずです。
そして、最終的には担当者の人柄。「人柄でよい家は建たない」というのも事実ですが、長い付き合いになることを考えると、結局は人間性で選ぶ人が多いのが現実です。
家づくりは、技術だけではありません。信頼関係の上に成り立つものなのです。
あなたは工務店派?それともハウスメーカー派?

工務店を選ぶのに、“正しい選び方”などというチェックリストに振り回される必要はありません。大切なのは、自分の価値観で選ぶことです。
まずはデザインの相性を確認する。実際の現場を見て、人となりを知る。そして、一社とじっくり向き合う覚悟を持つ。これができれば、きっと納得のいく家づくりができるはずです。
ハウスメーカーの場合、選び方はもう少し簡単です。どの会社も信頼性、安心感、品質の安定といった要の部分を押さえているので、あとはカタログから気に入ったものを選ぶように、プランを比較検討してみてください。
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あなたにとって、もっとも心地よい選択が見つかりますように。