ほんの少し足元を変えるだけで、暮らしがグッと自由になる──。
近年人気が高まっている『土間のある家』。日本の住宅には必須である、靴を脱ぎ履きするための玄関土間や土間収納だけでなく、最近では暮らしの一部に土間空間を取り入れるスタイルが注目を集めています。
“おしゃれさ”と”使い勝手”を両立させる、現代の土間の上手な取り入れ方を探ってみましょう。


土間リビング

従来のリビングといえば、フローリングの上にソファやラグを置いてくつろぐのが定番でしたが、最近では土間を取り入れたリビング空間が新たな人気を集めています。
» もう玄関はいらない?土間から始める新しい暮らし

土間リビングの魅力

床材にモルタルやタイルを使うことで、まったく新しい過ごし方を提案してくれる『土間リビング』。
土間リビングの最大の魅力は、空間の使い方に制約がないこと。ソファの代わりにベンチやラウンジチェアを置いてもいい感じになりますし、子どもたちが家の中と外を行ったり来たりして遊んでも、汚れを気にする必要がありません。また、大型の観葉植物やアート作品を飾ったり、テントやコンロなどのキャンプ道具を見せながら収納したりするのも素敵ですよね。

季節や気分に合わせて模様替えを楽しんだり、パーティーの時だけ家具を端に寄せて広いスペースを作ったりと、フレキシブルな使い方も可能です。

土間リビングのデザイン

土間リビングは、大きく2つのタイプに分けられます。普段過ごす場所はフローリングで、窓辺やなどリビングの一部だけを土間にしたものと、リビング全体を土間にしたもの。部分土間ならフローリング部分とのメリハリが生まれ、空間のアクセントに。全面土間にすれば、より大胆なインテリアが実現できます。
さらに、土間リビングは、吹き抜けや薪ストーブとの相性も抜群。高い天井と土間、アンティークなデザインの薪ストーブの組み合わせは、まるでアトリエのような雰囲気を演出します。

大きな開口部を設けて庭やテラスとつなげれば、室内と屋外の境界があいまいになり、より空間が広がります。


土間キッチン

リビングではなく、キッチンやダイニングの床を土間で仕上げるという土間空間の採り入れ方もあります。

土間キッチンのメリット

土間キッチンの最大のメリットは、水や油汚れに強く、掃除がラクだということ。料理中に水や調味料をこぼしても、サッと拭き取るだけでOK。家庭菜園で収穫した、あるいはご近所さんや親戚からいただいた土付きの野菜も、かごなどに入れてそのまま土間の上に置いておけます。

フルフラットの床でも、キッチンだけを土間仕上げにすることで空間をゆるやかに分けることができますし、土間部分を一段下げれば、オープンなキッチンでもカフェの厨房のような独立した雰囲気に。ダイニングテーブルに座る家族との目線も近くなるので、よりコミュニケーションも深まります。

土間キッチンのデメリット

ただし、土間のキッチンだと冬場は足元が冷えやすく、長時間立っていると疲れやむくみが出ることも。これらの課題を解決するためには、できるだけやわらかい履物や敷物で足元の環境を整える必要があります。

また、コップやお皿を落としたときに、土間の床はフローリングよりも割れやすいというデメリットもあります。大切な食器は落とさないように気を付けるのが一番ですが、気になる方はできるだけ割れにくい食器を使うことをおすすめします。


通り土間

通り土間は、玄関から室内の奥まで通路のように続く土間のこと。
たとえば、玄関または勝手口からパントリーやキッチンへと続く土間。外から帰ったら直接キッチンにアクセスできるため、重たい買い物袋を持ったまま家の中をウロウロすることがなくなります。土付きの野菜も家の中を持ち運ぶことなく、そのままパントリーへ。ゴミ出しも効率的に行えます。

現代の通り土間では、土間を単なる通路としてではなく、途中にベンチやカウンターを設けてヌックやワークスペースとして使用したり、壁面収納を充実させて機能性を高めたりと、さまざまな工夫が凝らされています。


玄関土間

従来の玄関土間は、靴を脱ぎ履きするだけの狭いスペースでした。しかし、この土間を少し広く設計するだけで、暮らしの幅がグッと広がります。
ベンチを備えれば、ご近所さんとちょっとおしゃべりしたり、子どもが友だちを招いて遊んだりできるスペースに。ベンチやテーブルを配置すれば、客時の簡易的な応対スペースに。レイアウトを工夫し、カウンターデスクや書棚を造作すれば、ワークスペースとしても活用できそうです。

さらに、広い玄関土間には自転車やスケートボード、サーフボードなどを見せながらおしゃれに仕舞うこともできるなど、現代の玄関土間は暮らしの多様なニーズに応える多機能空間へと進化しています。


土間を“おしゃれ”に見せるヒント


土間をおしゃれに見せるには、素材選びが重要です。モルタルなら無機質でクールな印象を、洗い出しなら和モダンな雰囲気を、タイルなら色や柄で自由にアクセントを加えることも可能。
なかでも、近年人気が高まっているのが“磨きコンクリート”。表面を研磨して仕上げることで、なめらかで上品な質感を得られます。また、左官職人の手による土間なら、微妙な凹凸や表情が生まれ、味わい深い仕上がりに。

また、土間の魅力を最大限に引き出すには、他の素材とのコントラストも大切。無垢材との組み合わせなら、土間のクールさと木材の温かみが絶妙なバランスを生み出します。アイアンと合わせれば、よりモダンで洗練された印象に。
照明計画も土間の印象を左右する重要な要素。間接照明を使えば、土間の質感がより美しく浮かび上がります。植物や間接照明、オープン収納も活用し、それぞれの素材が持つ特性を活かしながら、理想の土間をデザインしましょう。


土間の懐の深さ


土間の魅力は、ライフスタイルの変化に合わせて柔軟に使い方を変えられることにもあります。
子育て中は子どもの遊び場として、在宅勤務期間中は作業スペースとして。ときにはBBQやキャンプの準備場所になったり、DIYの作業場になったりと、その時々のニーズに応じて活用できます。土間があるからこそ、気軽に園芸やDIYに挑戦できるという面もあるでしょう。土や水を使う作業も、土間なら躊躇なく行えます。

このように、土間は外と中のあいまいな空間として機能し、暮らしの幅を広げてくれる貴重な存在です。
これから注文住宅をお考えの方は、土間のある暮らしも選択肢に加えてみてください。きっと、今まで想像していなかった新しい暮らし方が見つかるはずです。