日本では、古来より南側に大きな窓を設け、室内へふんだんに自然光を取り入れるのが通例でした。
ところが、近年、デザイン性と断熱性を担保する目的なのか、窓の小さい家、窓の少ない家が増えているようです。
たしかに、窓が小さいと外観はスタイリッシュに見えますし、断熱性能を考えると窓を必要最小限に抑えたい気持ちもわかります。だけど、それが本当に快適な暮らしにつながるのでしょうか?

窓のサイズ、小さくてもいい?

もちろん、建築基準法の採光基準を満たしていれば、窓が小さくても何ら問題ありません。
ただし、窓は家の外観デザインや断熱性能だけでなく、快適性や省エネ性にも大きな影響を与えますから、全体のバランスを考えて計画する必要があります。

断熱の観点から見ると、南側だけ大きく窓をとり、北、東、西向きの窓は極力小さくする、あるいは窓を設けないというのが、最近の主流でもあるようです。
窓は家の中でもっとも熱の出入りが多い場所ですから、窓面が小さければそれだけ夏涼しく、冬暖かく過ごせるのは確かでしょう。
しかし、窓の意味というのはそれだけではないはずです。新築時に窓のサイズを軽視し、住宅会社に言われるまま小さく、少なく設計してしまうと、建てたあとの後悔につながることもあるかもしれません。

窓が小さい家のデメリットは?

それでは、窓を小さくすることで、住む人にどんな影響があるのでしょうか。考えられるデメリットをいくつか挙げてみましょう。

1.採光が部屋全体に行きわたらない

窓が小さめ、あるいは窓がひとつしかないLDKは、どうしても暗い場所ができてしまいがち。とりわけ奥行きのある広いLDKほど、部分的に暗くなりやすい傾向にあります。南面の窓はできるだけ大きくとり、光の届かない場所には別に窓を設けるか、ハイサイドライトを活用するなどして対策を。

2.家の中に暗い場所ができてしまう

南面以外の窓をなくしてしまうと、居室は明るいけれど廊下が暗い、階段が暗い、洗面所が暗いなどということが、当然起こり得ます。たとえリビングが明るくても、家の中に暗い場所があるというのは意外とストレスです。欄間なども活用し、最低限の採光は確保することをおすすめします。

3.人によって閉塞感を感じる場合も

開放感を好む人にとっては、開口が少ないというのは閉塞感を感じるポイントにもなり得ます。窓が小さいのであれば、できるだけ間仕切りをなくす、室内建具をガラス戸にする、ハイサイドライトを設けて空を見せるなど、なんらかの形で開放感を演出しましょう。

4.自然エネルギーを活用しにくい

断熱という観点では窓は小さい方がよいものの、自然エネルギーを活用するという意味では窓は重要な役割を担っています。冬は暖かい直射日光を、夏は自然の風を取り入れることで、冷暖房の使用を抑えた、本当の意味でのエコな生活が実現します。

やっぱり窓は大きい方がいい?

断熱性能は大切ですが、だからといって室内の快適性を犠牲にしてまで窓を小さくする必要はありません。むしろ、別の部分でしっかりと断熱性を高めながらも、十分な採光と通風を確保し、開放的で気持ちよく暮らせる空間づくりを目指すべきではないでしょうか。
太陽光の恩恵を最大限に受けながら、熱の出入りを抑える設計手法。環境への配慮や光熱費の削減を考えると、ただ窓を小さくして冷暖房効率を上げるよりも、理にかなった選択といえそうです。

だからといって、もちろん窓はただ大きければよいというものでもありません。防犯面も考慮し、間取りや外構の状況も加味しながら、設計士と相談のうえでサイズやレイアウトなど総合的に判断してください。
» 外構計画で考える、新築一戸建ての防犯対策

窓サイズで後悔しないためのポイント

窓を大きくとるのであれば、サッシやガラスの性能にはしっかりとこだわりましょう。標準的な仕様なら樹脂サッシの複層ガラス、寒冷地なら樹脂サッシのトリプルガラスがおすすめです。
ガラスにも断熱性を重視したものと遮熱性を付加したものがありますから、夏の日差しが強い面には遮熱タイプのガラスを、それ以外の面には断熱タイプのガラスを入れるなど使い分けるとよいでしょう。
また、自然エネルギーを十分に活用するためには、太陽の向きや風の通り方を正しく把握できなければなりません。この辺りは、まず信頼のできる設計士をどう見極めるかが課題となってきます。

自分のライフスタイルを大切に

「窓は小さい方がかっこいい」
「窓が大きいと断熱性が下がる」
などといって、今は窓の小さい家が主流であると謳う住宅会社も中にはあるでしょう。それは、半分は正解ですが、残り半分は不正解です。
自然採光や自然通風の大切さを知っている設計士は、正面から見て窓が少ないと感じても、別の形でしっかりと開口を確保しています。断熱材や窓の性能にこだわれば、飾りみたいな小さな窓ばかりにしなくても、本来、断熱性能は十分に確保できるはずなのです。

何よりも重要なのは、あなたがどんな暮らしを望むかということ。南側だけでなく、北側や西側にも窓を設けて外を眺めたい、窓を開けて風を通したいというのであれば、それでもよいでしょう。窓は暮らしの質を大きく左右しますが、暮らしの質には「暖かさ」「涼しさ」だけでなく「心地よさ」も含まれるのだということを、お忘れなく。

住宅会社の担当者や設計士とじっくり話し合い、性能と快適性のバランスを取りながら、理想の住まいを実現させましょう。

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